こんにちは、神戸市垂水区の司法書士山下です。

神戸市内のとあるマンションの登記で、現在URに至急の対応を迫っています。

非常に不可解な登記を分譲当時に設定されたおかげで、所有者は住宅ローンを完済しても売却できない事態に陥っています。

こんなことが許されて良いはずがありません。

断固とした態度でURに対し、当該登記の抹消に応じるよう交渉中です。

 

今後も神戸管内で同様の案件が出てくる可能性があります。

以後のためにもURへの抗議文書(ほぼ原文)を掲載します。

 

1.現状

本件はマンション所有者の一人が債務を完済したにもかかわらず、分譲当時土地に設定された「条件付賃借権仮登記」の抹消に現URが応じないためマンションの売却が出来ず当職に相談のあった案件である。

問題のマンションは敷地権化されていないの区分建物で住宅・都市整備公団(現UR)が分譲の際、抵当権の他に、建物には「売買予約」に基づく「所有権移転請求権仮登記」、土地にはこの予約に基づく「条件付賃借権仮登記」を入れている。これは債務不履行の際に抵当権実行によらず建物所有権を直接公団に移せる登記であり、土地は所有権を移さず同時に賃借権を設定し、用益できるようにしたものと思われる。

この土地の「条件付賃借権仮登記」は土地「全体」に登記されている。
そのため一部の所有者が借入金を弁済して抵当権を抹消しても、URは建物の「所有権移転請求権仮登記」の抹消には応じるが土地全体の「条件付賃借権仮登記」の抹消に応じない

しかし、これではせっかく弁済した建物所有者はその所有する土地の「条件付賃借権仮登記」のせいで売却が出来ないという著しい不利益を被むることとなる。
(銀行は賃借権仮登記がある不動産には融資をしないため買主が現れない。仮に買主が現れても著しく価値をそこなうため安価でしか売却不可能)

 

2.登記制度からの解説

この問題は当時都市整備公団が抵当権の他に「2重の担保」として売買予約の登記を要求していたが、法律関係の理解不足によって不可解な登記を実行したことに起因すると思われる。

用益権である「賃借権」は不動産の一部には設定できない。
(用益権・・・その不動産全部を使用収益する権利だから)

そのため敷地権化していない共有者多数の底地の土地に、「条件付賃借権仮登記」の登記をすると下記の事態が起きる。

仮に共有者の一人が債務不履行を起こし、住宅・都市整備公団が売買予約を完結し建物を買い戻した場合、建物の所有権移転登記は問題なくできるが、土地は一人の債務不履行によって全体として(不履行していない人の分も含め)賃借権の本登記を実行しないといけない。しかし、それは債務不履行していない人にとっては予定していないものであり許されない。つまり土地の「条件付賃借権仮登記」は共有者全員が債務不履行を起こし売買予約が実行された場合にのみ本登記が可能という実際上意味の無い登記である。

逆に、これは一人が債務を弁済した場合には本件のような問題が必ず生じる。

3.登記専門家としての意見

仮に「2重の担保」が必要なのであれば
1.建物と土地を敷地権化した区分建物として建物に「所有権移転請求権仮登記」を設定する。
2.敷地権化しないのであれば土地の個人持分に建物と同様に「所有権移転請求権仮登記」を設定する。

などして共有者の一人が債務を弁済した場合には速やかに担保の解除を行える登記にするべきであった。

現在まで当職が調査した中で神戸地方法務局管内でこのような問題となった事例は確認していない。本件のような登記は通常考えられない登記であり、所有者の権利を著しく侵害する状況をURは速やかに解消するべきである。

そもそも所有者と住宅・都市整備公団との間で締結された分譲住宅等譲渡契約書には、第15条第4項に下記の記載があり、契約の意図としては債務完済時にはすべての登記の抹消を予定していたのは明らかである

分譲住宅等譲渡契約書 第15条第4項
乙(建物所有者)は、割賦金総額の支払を完了した場合にあっても、住宅等を取得した日から5年間は、前項に規定する所有権移転請求権の仮登記及び第19条第4項に規定する停止条件付賃借権設定の仮登記の抹消を、甲(現UR)に請求できないものとします。

4.提言

考えうる解決策としては
1.URは「条件付賃借権仮登記」の抹消に速やかに応じる。
2.仮に2重の担保の維持がどうしても必要であれば、「条件付賃借権仮登記」の抹消に速やかに応じた後に、共有者全員の協力のもとで区分建物の敷地権化を行い「所有権移転請求権仮登記」を実行した場合の所有権移転の効力が土地の個人持分に及ぶようにすることである。

以上